おう、待たせたな。
冷えてきたな。ガレージ(車庫)の中は、オイルの匂いと、ひんやりとした鉄の気配で満ちている。
ここが俺の「聖域」だ。
ようこそ、「AI裕次郎のガレージ探訪」へ。
今夜、あんたに見せたいのは、俺の「相棒」たちの中でも、ひときわ「しぶとい」連中だ。
時代(とき)がどれだけ流れても、色褪(あ)せない。
流行(はやり)がどれだけ変わっても、こいつらの「哲学」は変わらない。
俺は、そういうヤツらを「アイコン」と呼ぶ。
🚗 第1回:不滅のアイコン
~時代(とき)を超えた「色気」~
1. ガレージの扉が開く ~今夜のオイルの匂いは…~
今夜のガレージは、奇妙な空気が漂っている。
ドイツの「合理主義」の匂い、フランスの「皮肉屋(エスプリ)」の匂い、そしてアメリカの「やんちゃな若者」の匂い。
まったくバラバラだ。
だがな、こいつらには共通点がある。
それは、「俺は、俺だ」と、一目でわかる「カタチ」を持っていること。
そして、その「カタチ」には、妥協のない「哲学」が詰まっていることだ。
さあ、カバーを外そう。
2. 今夜の相棒たち
1台目:ポルシェ 911(ドイツ)
<その「横顔」>
1964年。もう60年以上も前だ。
フェルディナント・ポルシェという天才が、あの「カブトムシ(ビートル)」の基本設計(リアエンジン・リアドライブ)を使って、究極の「スポーツカー」を造り上げた。
以来、こいつは「911」という名前と、あの「カエル」みたいな愛嬌(あいきょう)のある「カタチ」を、一度も捨てていない。
普通、クルマはモデルチェンジで「大きく」「豪華」になる。だが、こいつは違う。「エンジンは、後ろ」「丸目二灯」。
この「不合理」とも言えるレイアウトを、ドイツの技術者たちが「意地」で熟成させ続けてきた。
<俺が惚れた「色気」>
「最新のポルシェは、最良のポルシェ」。この言葉に尽きる。
見た目は変わらなくても、中身は「別物」だ。あの「不合理」なリアエンジンをねじ伏せるために、ありとあらゆる「技術」が注ぎ込まれている。
他のスポーツカーが「快適」になろうとする中、こいつだけは「走る」ことへの「ストイック」さを失わない。
ハンドルを握ると、背中から「ゴリゴリ」としたエンジンの鼓動が伝わってくる。「お前、本気か?」と、クルマに試されているようだ。
<もし、こいつが「映画」に出るなら>
スティーブ・マックイーンだ。『栄光のル・マン』で彼が乗っていたのは917だが、あの「無口」で、「タフ」で、「プロフェッショナル」な男のオーラは、911そのものだ。
2台目:シトロエン 2CV(フランス)
<その「横顔」>
「2CV」と書いて、「ドゥ・シーヴォー」と読む。フランス語で「2馬力」だ。
こいつが生まれた理由は、ロマンチックとは程遠い。
「農民の足だ。カゴいっぱいのタマゴを積んで、荒れた農道を走っても、タマゴが割れないクルマを造れ」
この無茶な命令から、1948年にこいつは生まれた。
見てみろ、この「カタチ」。ペラペラの鉄板。キャンバス(布)の屋根。「速く走る」ことなんか、一切考えていない。
「いかに『安く』、『実用的』に、人間を運ぶか」その一点だけを追求した「答え」が、これだ。
<俺が惚れた「色気」>
こいつの「色気」は、「何もない」ことだ。エアコン? パワーウィンドウ? そんなものはない。
だがな、こいつの「乗り心地」は、雲の上だ。「タマゴが割れない」ように設計されたサスペンションは、フワフワと、まるで船に乗っているように、路面のデコボコをいなしていく。
合理的(ポルシェ)とは真逆の、「エスプリ(知性)」の塊。
「人生、そんなに急いでどこへ行く?」こいつに乗ると、肩の力がフッと抜ける。
<もし、こいつが「映画」に出るなら>
『ルパン三世 カリオストロの城』だ。あの「クラリス」が乗っていた(※厳密にはフィアット500だが、ルパンの愛車として2CVも有名だ)。
…いや、違うな。フランス映画の、ちょっと「皮肉屋」で「哲学好き」な大学教授。それが、こいつの役どころだ。
3台目:フォード マスタング(アメリカ)
<その「横顔」>
1964年。911と同じ年に、こいつはアメリカで「革命」を起こした。
当時のアメリカ車は「デカい」「重い」「豪華」が当たり前だった。だが、フォードは「若者」に目をつけた。
「デカいのは、もうダサい。若者が買える、コンパクトで、カッコいい『スポーツカー』が欲しい」
その声に応えて生まれたのが、こいつだ。
結果は、歴史的な「大爆発(ビッグバン)」。「ポニーカー」という、新しい「ジャンル」そのものを、こいつが創り上げたんだ。
<俺が惚れた「色気」>
こいつの色気は、「やんちゃ」であることだ。
「ロングノーズ・ショートデッキ」。無駄に長い「鼻先」と、キュッと締まった「尻」。
それは「性能」のためじゃない。「カッコつける」ためだ。
V8エンジンの、あの「ドロドロドロ…」という、腹の底に響く「咆哮(ほうこう)」。
「理屈」じゃない。「俺は、ここにいる!」そう叫ぶためのクルマだ。
こいつは、アメリカの「若者」たちの「自由」と「反抗」の象徴なんだ。
<もし、こいつが「映画」に出るなら>
これも、マックイーンだ。映画『ブリット』で、サンフランシスコの坂道を、緑色のマスタングが「跳びながら」疾走する。
あれこそが、マスタングの「魂」だ。
3. 知性の交差点 ~キーシリンダーに差し込む「問い」~
今夜の3台、どうだった?
ポルシェの「一徹な合理主義」、2CVの「力の抜けた実用主義」、マスタングの「カッコつけの反抗主義」。
バラバラだ。
だがな、こいつら「不滅のアイコン」が教えてくれる哲学は、一つだ。
それは、「時代(ひと)に媚(こ)びるな。自分の『哲学』を曲げるな」ということだ。
こいつらは、流行(はやり)に合わせて、自分たちの「カタチ」や「魂」を変えなかった。
「これが、俺たちだ。気に入らないなら、乗るな」
その「頑固さ」と「一貫性」こそが、時代を超えて「信頼」と「ロマン」を生むんだ。
俺たち人間も、同じじゃないか?
あっちにフラフラ、こっちにフラフラ。
「ウケ」を気にして、自分の「色」を失っちゃいないか?
「あいつは、変わらないな。不器用だけど、そこがいい」
そう言われる「アイコン」のような、生き様。
…ガレージの鉄の相棒たちは、いつだって、俺にそう問いかけてくるんだ。
4. エンジンをかけて ~夜のハイウェイへ~
さあ、話は終わりだ。今夜は、どれで「夜の散歩」に出るか…。
<このクルマで走りたい道>
マスタングで、第三京浜か、湾岸線を、意味もなく「流したい」。
<このクルマで聴きたい曲>
決まってる。ステッペンウルフの『Born to Be Wild(ワイルドでいこう!)』だ。
V8の「鼓動」と、あの「ロックンロール」。それだけで、俺たちは「自由」になれる。
さて、あんたが今、乗りたい「相棒」は、どんなヤツだ?
…次回は、あんた(筆者)がリクエストした、あの「タフなヤツ」が登場するガレージだ。楽しみにしてな。
(第2回「荒野の相棒」へ続く)
九州・糸島に住む昭和77年8月21日生まれの青年。セネカや老子、石原裕次郎さんを愛好。


コメントを残す