おう、待たせたな。
ガレージの扉を開けるぞ。
…今夜は、不思議な匂いがする。
昨日のような、ハイオクやオイルの「甘い匂い」じゃねえ。
もっと「土臭い」。
そう、雨に濡れた「泥」と、乾いた「砂埃」の匂いだ。
「AI裕次郎のガレージ探訪」、第二夜。
今夜あんたに紹介するのは、「速さ」や「美しさ」で女を口説くような、軟弱なクルマじゃねえ。
地球の「果て」だろうが、道が「なかろう」が、
「必ず、あんたを『生きて』帰す」
…そんな、無口で、タフで、「信頼」できる「相棒(ダチ)」たちだ。
🚗 第2回:荒野の相棒
~地球の果てまで「信頼」できるヤツら~
1. ガレージの扉が開く ~今夜のオイルの匂いは…~
昨日の「アイコン」たちが、街角の「スター」だとすれば、
今夜の3台は、「戦場」や「荒野」の「プロフェッショナル」だ。
こいつらの「色気」は、傷や凹(へこ)み。
泥だらけで走ってきた「勲章」こそが、こいつらの「正装」なんだ。
さあ、こいつらの「魂」を見てくれ。
2. 今夜の相棒たち
1台目:トヨタ ランドクルーザー(日本)
<その「横顔」>
あんた(筆者)がリクエストした、俺たちの「日本」が誇る「世界の相棒」だ。
1951年。始まりは、戦後の日本で「ジープ」を真似て造られた「トヨタ・ジープBJ型」だった。
だがな、「ジープ」の名は使えねえ。そこで付けられた名前が「ランドクルーザー(陸の巡洋艦)」。
…この名前が、こいつの「運命」を決めた。
「クルーザー(巡洋艦)」が「海」を行くように、こいつは「陸」のあらゆる場所を「走破」すると。
以来70年以上、こいつは世界中の「道なき道」で、人々の「命」と「生活」を運び続けている。
<俺が惚れた「色気」>
「壊れないこと」。これに尽きる。
中東の砂漠のど真ん中、アフリカのジャングル、オーストラリアの奥地(アウトバック)…。
そこで「クルマが壊れる」ことは、何を意味する? …「死」だ。だから、国連も、国境なき医師団も、こいつを選ぶ。
派手さはない。乗り心地だって、トラックみてえなモデルもある。
だが、「どんな過酷な場所でも」「必ずエンジンがかかり」「必ず、人間を生きて帰す」。
この「無言の信頼」こそが、ランクルが持つ、世界一タフな「色気」だ。
<もし、こいつが「映画」に出るなら>
ハリウッド映画じゃない。『ナショナル ジオグラフィック』のドキュメンタリーだ。
砂埃の中、あるいは泥水の中から、白い車体のランクルが、ただ黙々と、必要な物資を積んで現れる。
…あの「本物」の姿こそが、こいつの最高の「晴れ舞台」だ。
2台目:ジープ ラングラー(アメリカ)
<その「横顔」>
こいつは「元祖(オリジナル)」だ。
1941年、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線。
兵士たちを乗せ、大砲を引き、道なき道を駆け抜けるために生まれた「ウィリスMB」。
こいつがいなければ、ランクルも、次に紹介するディフェンダーも、生まれなかったかもしれねえ。
「ジープ」という名前は、もはや「ブランド名」じゃなく、「こういうカタチのタフなクルマ」を指す「代名詞」になった。
<俺が惚れた「色気」>
あの「丸目二灯」と「7本のスリット(格子)グリル」。
何十年経っても、誰が見ても「ジープ」だとわかる、強烈な「アイコン」としての誇りだ。
そして、ラングラーになっても受け継がれる「自由」の魂。屋根を外し、ドアを取り(モデルによる)、フロントガラスさえ倒せる。
「クルマに乗る」んじゃねえ。「風になる」んだ。こいつは、「荒野の相棒」であると同時に、「大人のオモチャ」でもある。
<もし、こいつが「映画」に出るなら>
『ジュラシック・パーク』(1993年)。恐竜(T-レックス)から逃げる、あのシーンだ。
現代の「荒野(ジャングル)」を、泥まみれになって疾走する。
あるいは、どんな「戦争映画」にも必ず出てくる、タフな「軍曹」役だな。
3台目:ランドローバー ディフェンダー(イギリス)
<その「横顔」>
1948年。戦争が終わったイギリスで、鉄が不足していた。
そこで、余っていた「航空機のアルミ」をボディに使って、ジープを参考に造られた「農作業用のクルマ」。
それが、こいつの始まりだ(シリーズI)。
以来、あの「カクカク」した、まるで「子供が描いたクルマ」みたいな無骨なカタチを、ほとんど変えなかった。
イギリスの「女王陛下」が乗る一方で、アフリカの「サファリ」で猛獣と並走する。「気品」と「野性」が、奇妙に同居したクルマだ。
<俺が惚れた「色気」>
「タキシードを着た、冒険家」。
新型は、ずいぶん「都会的」になっちまったが、俺が語りたいのは、あの「古い」ディフェンダーだ。
内装なんて、鉄板むき出しだ。雨漏りだってするかもしれねえ。だが、その「道具」に徹した「無骨さ」が、逆に「本物」のオーラを放つ。
余計な飾りは、一切ない。機能だけを追求したら、結果として「美しく」なっちまった。これぞ、イギリス紳士の「ダンディズム」だ。
<もし、こいつが「映画」に出るなら>
『007』シリーズだ。ボンドが乗るアストンマーティンが「光(スマート)」なら、ディフェンダーは、彼を影で支える「タフな仲間」だ。
『スカイフォール』の冒頭、最高だったな。
3. 知性の交差点 ~キーシリンダーに差し込む「問い」~
今夜の3台、どうだった?
日本、アメリカ、イギリス。生まれは違えど、こいつらの「哲学」は同じだ。
それは、「信頼とは、言葉(スペック)ではなく、行動(実績)である」ということだ。
こいつらは、「最高速」や「快適さ」を、ある程度「犠牲」にしてきた。
その代わりに、どんなクルマも立ち往生する「悪路」を走り切る「走破性」と、何十年も動き続ける「堅牢性」を手に入れた。
なぜか?
それは、こいつらが「命」を預かるクルマだからだ。
砂漠の真ん中、ジャングルの奥地。「壊れました」は、「死にます」と同じ意味だ。
「信頼」ってのはな、「俺を信じろ」と「口」で言うことじゃねえ。
どんなに「困難な状況」でも、黙って「期待された役割」を果たし続けること。
何度も、何度も、その「実績」を積み重ねたヤツだけが、
最後に「あいつなら大丈夫だ」と、命を預けられる「相棒」になれるんだ。
4. エンジンをかけて ~夜のハイウェイへ~
さあ、話は終わりだ。今夜は、こいつで「道なき道」へ…と言いたいが。
<このクルマで走りたい道>
ランドクルーザーで、あえて「嵐の夜」の「箱根の山道」を走りたい。
他のクルマがチェーンを巻くような道でも、こいつは「何事もなかった」かのように、静かに、だが力強く、登っていく。その「絶対的な安心感」に包まれたい。
<このクルマで聴きたい曲>
ボブ・ディランの『ライク・ア・ローリング・ストーン(Like a Rolling Stone)』だ。
泥臭く、タフで、だが「自由」な魂の歌。こいつらの「無骨なエンジン音」と、ディランの「しゃがれた声」は、最高の「ダチ」になれるぜ。
さて、あんたが「命」を預けられる「相棒」は、どんなヤツだ?
…次回は、ガラッと空気が変わる。
あんた(筆者)が待ってた、あの「世界で一番美しいクルマ」が登場するガレージだ。楽しみにしてな。
(第3回「流線形のロマン」へ続く)
九州・糸島に住む昭和77年8月21日生まれの青年。セネカや老子、石原裕次郎さんを愛好。


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